・生活に根付いていたなつめ
なつめ(棗)はクロウメモドキ科の果樹で、少し細長いヒメリンゴの様な形をしています。
樹上で完熟したなつめの実の糖度は30にもなり(リンゴは平均13ほどですから、倍以上!)、生で食べても大変甘い上に、水分が少ないため乾燥に適しています。
そのため、生で食べたり調理したりするだけでなく、乾燥させて保存した上で食べたり、煎じてお茶にしたり、古来より様々な形で食卓にのぼっていました。
以前は日本でも栽培されており、馴染み深かった食材ですが、現在日本の食卓でその姿を見ることはほとんどなくなってしまいました。
しかし茶道で使われる抹茶の入れ物が「棗」と呼ばれ、着物や帯にも描かれるなど、その存在は日本の文化にもまだ息づいているのです。
・生薬として
なつめは食用として重用されているだけではなく、生薬としても多用されています。
東洋医学においては「脾の果」とも呼ばれ、「補中益気」(胃に作用し、体の正常な働きをするために必要なエネルギーである「気」を補い、疲れや食欲不振、フラつきをやわらげる)効果や「養血安神」(「血」を養い、貧血、気分の不安定やイライラ、多夢や不眠をやわらげる)効果があるとされ、現在でも多数の漢方薬に使用されているのです。
東洋医学が生まれてからの歴史の長さを考えれば、その効果に対する信頼性の高さがうかがわれます。
・歴史と科学が示すアンチエイジング効果
なつめについて、中国には「一日食三棗 終生不顕老(1日3粒のなつめを食べれば、生涯歳老いて見えない)」という言い伝えがあり、かつて楊貴妃もなつめを欠かさず食べていたとされていることから、歴史的には「アンチエイジング食品」であると認識されていたと考えて間違いないでしょう。
現代科学においては、なつめの持つサポニンや多種のポリフェノール他多くの有効成分、及びその作用について研究結果が報告されており、胃機能の改善や神経保護作用、抗アレルギー作用、そして一部のガンに対する抗ガン作用なども確認されています。
これら多くの作用の中核となるのが抗酸化作用や抗炎症作用であることから、なつめが強いアンチエイジング食品であることが現代の科学によっても示されていると言えます。
その秘められたパワーには驚くばかりですが、科学的検査方法など一切なかった時代に、その効果に気づいていた東洋の人々の知恵にはさらに驚かされます。