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診察室の修行僧①

〜悩める方々が歩む、「自分を救う」道〜

私の診察には様々な方が訪れます。
その一人ひとりに向き合い、お手伝いをさせて頂くのですが、時に驚くほど「修行僧」然とした方に出会うことがあります。

これは、そんな方々のお話です。

・書いたノートは10冊以上!地道な作業で「リハビリ」を進めたAさん

初めて私の診察室に来た頃、30代半ばだったAさん。
幼少期から抱えていた体の問題や家庭環境などの問題もあり、精神状態は非常に不安定でした。
度々不穏や狂乱、過呼吸などがあり、夜間救急搬送されることも珍しくない、そんな状態だった方です。

私はそんなAさんに「認識を調整する」ための方法として認知療法を取り入れ、日々自分に起きたこと、それに対する自分の感じ方、そしてその出来事をポジティブにとらえることが出来る考え方などをノートに記載する様にお話ししました。
そして毎回診察の度に記載内容を一緒に確認し、○ペン先生よろしく様々なコメントを書き加え、認識の調整のお手伝いをさせて頂きました。

当初は出来事の「事実」と「自分の認識」の区別もままならず、その出来事自体も過去のことと今のことがくっついてしまったりして、ご本人の記載も長文で多い、それに私のコメントが大量に入るという、とてもゴチャゴチャしたノートになっていました。

しかしAさんはそれでも毎回、私のコメントを読み返しながらノートを書き続け、次第に認識の調整が出来る様になっていきました。
そして救急受診する様な不穏や狂乱は過去のものとなり、再就職にまで至る頃には、Aさんが描き続けたノートは一般的なB5サイズで10冊以上にもなっていました。

コツコツと毎回ノートを書き続け、少しずつ少しずつ前進していく姿は、仏道修行を続ける修行僧のよう。

この地道な努力こそ、まさに「リハビリ」でした。