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診察室の修行僧③

〜悩める方々が歩む、「自分を救う」道〜

私の診察には様々な方が訪れます。
その一人ひとりに向き合い、お手伝いをさせて頂くのですが、時に驚くほど「修行僧」然とした方に出会うことがあります。

これは、そんな方々のお話第三弾です。

・まさに「芸は身を助く」。自分の好きなことで自分の世界を変えたCさん

初めて私の診察室に来た頃、蚊の鳴く様な声で話していたCさん。対人関係に苦しみやすく、自信を失い、不安でいっぱいのご様子でした。

入院も何度か味わい、治療中も度々対人関係で不安定になる時期が多く見られていました。
しかし、か細い声やその繊細さとは裏腹に、Cさんとお話しをしていると「この人は強い根があるな」と感じることが多かったのが印象的です。

「根」というのは私の個人的な表現で、その人が生育歴の中で手に入れた、生きる力の様なものです。

根の強い方は、例えば踏まれてもまた立ち上がってくる麦の穂の様に、その時辛くて倒れてもまた立ち直る力が強いのですが、詳しくはまた別の記事で。

ともあれ、そのCさんは最後の入院を経て地域のデイサポート施設へ通う様になったのです。

通う前は不安いっぱいのご様子でしたが、スタッフの方の温かい支援を受けて継続的に通うことが出来る様になったCさんは、そこで好きだった絵を描く様になりました。

当初は診察室で活動を報告する時も、自信なさ気に
「あの、こんなことでいいんでしょうか…」
という調子でしたが、私は「いいぞもっとやれ」一択。
Cさんはスタッフの方に励まされながら、先ずは施設のイメージキャラクターを作成し、次にお便りの挿絵を任される様になりました。

さらにご自身の体験を踏まえて、同じ様に苦しむ方々に届けたいと、ついに1冊の絵本を描き上げるまでに至りました。

診察のたびに報告して下さるCさんの表情と言葉は喜びと感謝にあふれ、どこか誇らしげにも見受けられる様になりました。

相変わらず声は細いままでしたが、それはもう自信のない、消え入りそうな声ではありません。

聞くところによると、施設のお便りに描かれていた可愛いイラストが市役所の職員の目に留まり、市のイベントのチラシへの挿絵も頼まれたとか!

自分の力で、自分が出来ること、自分がしたいことを一生懸命やり続け、自分では考えもしなかったところまで到達したCさん。

それは「奇跡」ではなく、Cさんが自分の力で切り開いて歩いた「軌跡」に他なりません。

「リハビリ」理論でもお話しした通り、どれだけ支援の手があろうとも「歩くことは自分でしか出来ない」からです。

Cさんは、自分で自分の世界を変えたのです。

…そうだ、今度サインを頂いておかなければ。