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「イガグリ」理論④

〜 受け取る力と双璧をなす力の話 〜

「イガグリ」コミュニケーションのお話、第4回です。

・情報を「抽出」。大胆に。

相手が投げて来ているのが「イガグリ」であると観察出来て、
もしかしてこれは先ほどの質問への回答のつもりなのでは…と分析出来たら。

今度は「抽出」です。
「イガグリの中から、栗だけを抜き出す」のです。

栗拾いのご経験がある方はご存知かもしれませんが、栗は他の果物の様に「丁寧に両手で扱って」取ったりしません。

「落ちた」イガグリを、
靴底で「踏んで割り」、
中の栗を「トングで拾って」、
カゴに入れます。

つまり「イガグリ」コミュニケーションにおいては
「徹頭徹尾、相手の投げて来たものを丁寧に扱わない」
のです!

ここが「会話はキャッチボール」という通常の概念と全く違うところですね。

もちろん「真上から踏みつけるだけ」という訳ではありません。
転がってしまわない様に、両足の靴底で上手く押し開く様に踏むという作業には少しコツがいるところもあります。

それでも、「飛んでくるイガグリを受け止めて、その中から栗を丁寧に手で抜き出す」ことと比べたら、随分安全で簡単なのではないでしょうか?

・抽出できた情報を確認する。

栗が抜き出せたら、次は答え合わせです。
ここが、以前の記事の③-cとは違うところ。

普通のコミュニケーションでは「相手に意図を直接訊く」ことができますが、「イガグリ」コミュニケーションでは「そもそも言葉にすることが苦手」な人が相手のことが多いため、相手に直接訊いてしまうと、「何で解らないんだ」とばかりにますます「必死に」イガグリを投げ始めてしまう可能性があるのです。

だからこちらが「分析」して、「抽出」して、その上で相手に「確認」をするという流れになります。

栗が抜き出せたら、「今夜は栗が良かったのかな。栗ご飯?それともグラッセにしようか?」という様に
「相手が選べる選択肢を提示して」確認する
ことが出来ればベスト。

これが当たっていれば、事態は大きく変わります。

・最後まで、相手の言動に惑わされない

あなたが「栗ご飯かグラッセか」と訊くと、恐らく相手はイガグリを投げる手をゆるめるでしょう。
そして、「栗ご飯に決まってるだろ」と教えてくれる…
場合も、一応あります。

でも、しばしば不機嫌に黙り込んで、ため息をついたりするのです。
時には、舌打ちをしてさっさと帰り始めたり。

どういうことでしょう?
当たっていると思ったのに、外れだったのでしょうか?

違います。

「自分はどうしてこんな伝え方しか出来ないんだろう」と思ったから、不機嫌にため息をついたんです。
「やっと伝わったんなら、早く帰って食べたい」と思ったから、舌打ちをして帰り始めたんです。
いや、予想の斜め上で「栗ならモンブランに決まってるのに、分からないならケーキ屋さんに行くしかない」と思ったのかも知れませんが…

いずれにせよ、まるでキャッチボールにはなっていません。

でも、食べたいものを訊いたあなたへ「栗を食べたいと伝えたかった」相手の目的は果たされたと考えて良いのです。

相手の言動に直接目を向けて惑わされることなく、「意図に目を向けて」コミュニケーションを図る。
こうして、ようやくイガグリ騒動の幕が下りました。

おかしな話のようですが、これは本当に日常的に起こり得るお話です。
「イガグリ」を投げてくる相手に思い当たる節のある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「受け止めない力」。

そして「観察、分析、抽出」。

栗の美味しいこの季節、是非意識してみて下さいね。